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日本改造法案大綱 「卷一 國民の天皇」 北一輝

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    天皇の原義。天皇は國民の總代表たり、國家の根柱たるの原理主義を明かにす。

    註一

    日本の國體は三段の進化をなせるを以て天皇の意義又三段の進化をなせり。第一期は藤原氏より平氏の過渡期に至る專制君主國時代なり。
    此間理論上天皇は凡ての土地と人民とを私有財産として所有し生殺與奪の權を有したり。第二期は源氏より徳川氏に至るまでの貴族國時代なり。此間は各地の群雄又は諸侯が各其範圍に於て土地と人民とを私有し其上に君臨したる幾多の小國家小君主として交戰し聯盟したる者なり。
    從て天皇は第一期の意義に代ふるに、此等小君主の盟主たる幕府に光榮を加冠する羅馬法王として、國民信仰の傳統的中心としての意義を以てしたり。此進化は歐洲中世史の諸侯國神聖皇帝羅馬法王と符節を合する如し。
    第三期は武士と人民との人格的覺醒によりて各その君主たる將軍又は諸侯の私有より解放されんとしたる維新革命に始まれる民生國時代なり。此時よりの天皇は純然たる政治的中心の意義を有し、此の國民運動の指揮者たりし以來現代民主國の總代表として國家を代表する者なり。即ち維新革命以來の日本は天皇を政治的中心としたる近代的民主國なり。
    何ぞ我に乏しき者なるかの如く彼の「でもくらしー」の直譯輸入の要あらんや。此の歴史と現代とを理解せざる頑迷圃體論者と歐米崇拜者との爭鬪は實に非常なる不祥を天皇と國民との間に爆發せしむる者なり。(兩者の救ふべからざる迷妄を戒しむ。)

    註二

    國民の總代者が投票當選者たる制度の國家が或る特異なる一人たる制度の國より優越なりと考ふる「でもくらしー」は全く科學的根據なし。
    國家は各々其國民精神と建國歴史を異にす。民國八年までの支那が前者たる理由によりて後者たる自耳義より合理的なりと言ふ能はず。米人の「でもくらしー」とは社會は個人の自由意志による自由契約に成ると云ひし當時の幼稚極まる時代思想によりて、各歐洲本國より離脱したる個々人が村落的結合をなして國を建てたる者なり。
    其の投票神權説は當時の帝王神權説を反對方面より表現したる低能哲學なり。日本は斯る建國にも非ず又斯る低能哲學に支配されたる時代もなし。
    國家の元首が賣名的多辯を弄し下級俳優の如き身振を晒して當選を爭ふ制度は、沈默は金なりを信條とし謙遜は美徳を教養せられたる日本民族に取りては一に奇異なる風俗として傍觀すれば足る。

    註三

    現時の宮中は中世的弊習を復活したる上に歐洲の皇室に殘存せる別個の其等を加へて、實に國祖建國の精神たる平等の國民の上の總司令者を遠ざかること甚し。明治大帝の革命は此の精神を再現して近代化せる者。從て同時に宮中の廓清を決行したり。
    之を再びする必要は國家組織を根本的に改造する時獨り宮中の建築をのみ傾柱壤壁のまゝに委する能はざればなり。

    註四

    • 華族制廢止。華族制を廢止し、天皇と國民とを阻隔し來れる藩屏を撤去して明治維新の精神を明にす。
    • 貴族院を廢止して審議院を置き衆議院の決議を審議せしむ。
    • 審議院は一囘を限りとして衆議院の決議を拒否するを得。
    • 審議院議員は各種の勳功者間の互選及勅選による。

    註一

    貴族政治を覆滅したる維新革命は徹底的に遂行せられて貴族の領地をも解決したること、當時の一佛國を例外としたる歐洲の各國が依然中世的領土を處分する能はざりしよりも百歩を進めたるものなりき。然るに大西郷等革命精神の體現者世を去ると共に單に附隨的に行動したる伊藤博文等は、進みたる我を解せずして後れたる彼等の貴族的中世的特權の殘存せるものを模倣して輸入したり。
    華族制を廢止するは歐洲の直譯制度を棄てて維新革命の本來に返へる者。我の短所なりと考へて新なる長を學ぶ者と速斷すべからず。既に彼等の或者より進みたる民主國なり。

    註二

    二院制の一院制より過誤少なき所以は輿論が甚だ多くの場合に於て感情的雷同的瞬間的なるを以てなり。上院が中世的遺物を以てせず各方面の勳功者を以て組織せらるる所以。
    普通選拳。二十五歳以上の男子は大日本國民たる權利に於て平等普通に衆議院議員の被選擧權及び選擧權を有す。地方自治會亦之に同し。女子は參政權を有せず

    註一

    納税資格が選擧權の有無を決する各國の制度は議會の濫觴が皇家の徴税に對して其の費途を監視せんとしたる英國に發すと雖も、日本國自身の原則としては國民たる權利の上に立てさるへからす。則ち如何なる國民も間接税の負擔者ならさるはなしと云ふ納税資格の擴張せられたる普通選擧の義に非す。
    徴兵が「國民の義務」なりと云ふ意義に於て選擧は「國民の權利」なり。

    註二

    國家を防護する國民の義務は國政を共治する國民の權利と一個不可分の者なり。日本國民たる人權の本質に於て、羅馬の奴隷の如く、又昇殿をも許されざる王朝時代の犬馬の如く、純乎たる被治者として或る知者階級の命令の下に其の生死を委すべき理なし。
    此の權利と此の義務とは一切の條件に依りて干犯さるることを許さず。従て假令國外出征中の現役將卒と雖も何等の制限無く投票し且つ投票せらるべし。

    註三

    女子の參政權を有せすと明示せる所以は日本現在の女子が覺醒に至らすと云ふ意味に非ず。
    歐洲の中世史に於ける騎士が婦人を崇拜し其眷顧を全うするを士の禮とせるに反し、日本中世史の武士は婦人の人格を彼と同一程度に尊重しつつ婦人の側より男子を崇拜し男子の眷顧を全うするを婦道とする禮に發達し來れり。
    この全然正反對なる發達は社會生活の凡てに於ける分科的發達となりて近代史に連なり、彼に於て婦人參政運動となれる者我に於て良妻賢母主義となれり。政治は人生の活動に於ける一小部分なり。國民の母國民の妻たる權利を擁護し得る制度の改造をなさば日本の婦人問題の凡ては解決せらる。婦人を口舌の鬪爭に慣習せしむるは其天性を殘賊すること之を戰場に用ゆるよりも甚し。
    歐米婦人の愚味なる多辯、支那婦人間の強奸なる口論を見たる者は日本婦人の正道に發達しつゝあるに感謝せん。善き傾向に發達したる者は惡しき發達の者をして學ばしむる所あるべし。この故に現代を以て東西文明の融合時代と云ふ。直譯の醜は特に婦人參政權問題に見る。(國民の生活權利參照。)

    國民自由の恢復。從來國民の自由を拘束して憲法の精神を毀損せる諸法律を廢止す。文官任用令。治安警察法。新聞紙條例。出版法等

    註一

    周知の道理。只各種閥族等の維持に努むるのみ。


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